逆説の日本史 (3)
井沢 元彦
小学館 刊
発売日 1998-04
歴史で浮かぶ日本人像 2006-11-11
1,2と同様、 幾つもの間接的な手掛かりから一つの答えをつむぎ出すミステリー小説の解説のような展開は健在である。
本巻は前巻ほど日本の歴史学の三大欠陥に対する批判が長々と語られなかった分、読みやすく引き込まれた。
日本の「怨霊信仰」は、前巻までの解説で逆説の日本史を読む上で欠かせないキーワードとして頭の中にインプットされた。
そして本巻では、「言霊信仰」が新たなキーワードとして登場している。
これらのキーワードは日本史を読み解くだけでなく、近現代日本の問題の根本原因を考える上でも重要なキーワードであることがわかる。欧米や中東の行動原理を理解する上でユダヤ教、キリスト教、イスラム教の思想を知ることが不可欠であるのと同様である。
日本は「無宗教国家」という幻想に惑わされすぎて本来の姿を見失っているように思う。
本書のように古代の思想を考慮して歴史を読み解くことが、現代の日本のあり方を考える上で貴重な財産になるはずである。
歴史は繰り返すのだから。
眠らない歴史作家の万葉言霊論 2006-04-26
『万葉集』は誰が何の目的で編纂したのか、自明のことではない。他の人がそうであるように井沢もまた推測で次のように言う。
おそらく「原万葉集」にあたるものは、当時著名な歌人であった大伴家持の手に入り、家持はこれに自分や一族の歌、さらに地方で採集した歌などを加えて、一大歌集として完成させたのではないか。
しかし、家持は国家の罪人扱いされていたので、そういう人間が編纂した、しかもその歌の含まれている歌集、つまり「反政府詩集」を、どうして世に出すことができるだろう。『万葉集』はその成立から見て、犯罪者の私家版だったのである。だからこそ成立の事情は「正史」に載せられないのである。では、どうしてその私家版が世に出てもてはやされるようになり、「勅撰集の先駆」とまでみなされるようになったのか。
それは怨霊を恐れてのことである。鎮魂のためである。種継事件に連座した家持の罪を許し名誉を回復させたのである。だとすると、『万葉集』の公刊(?)もその目的に添ったもの「鎮魂のため」ということになる。
折口信夫もまた「万葉集鎮魂歌集説」を唱えている。鎮魂の第一義は招魂であり、魂鎮めの意義を持ってくる。それはまた長寿を祈る「万歳を言祝ぐ歌集=万葉集」ということになる。
梅原猛もまた『水底の歌』で柿本人麿は平城天皇の時代に、大伴家持の復権に伴って、名誉回復し正三位を追補されたという。
万葉集の謎に迫る歴史家の思いきった説が展開されていて、迫力がある(雅)
道鏡+吉備真備= 2006-04-07
このシリーズを第7巻まで読みましたが、一番面白く読めたのがこの巻でした。
道鏡に関しては、僕も思いっきり「怪僧」のイメージだったので目からウロコです。
結構いいヤツだったんですね、彼。
井沢氏がくどいほど言っている「宗教的・呪術的側面の軽視ないし無視という歴史学会の欠陥」「史料至上主義の落とし穴」についても、個人的にはこのくだりが最もスンナリ飲み込めた気がします。
称徳天皇を再評価しました 2003-04-24
この巻で1番好きなのは、称徳天皇と道鏡の考察。なるほど、これを読むとこの時代の反逆者は、実は藤原仲麻呂(恵美押勝)であることが、よく分かるし、また充分に説得力のある史実や証言が詰まっている。また、続く光仁天皇桓武天皇以降、天皇家の黄金時代が短くはあるが続くのだが、藤原氏がいかに巧妙に取り入って、後の摂関時代の礎を作っていったか、などがよく分かる。作者も書いているとおり、平安時代は、ドラマとしての人気がない(そういわれれば確かにそうだ)が、どっこい、日本史としては、飛鳥奈良~平安時代がもっとも面白い、と思わせてくれた。やはり、怨霊と言霊の国なんだなあ。でも、称徳って、可哀想だなあ、合掌。
日本の何故?に迫る 2002-05-27
井沢氏の「逆説の日本史」シリーズ第3巻。これには、称徳天皇と道鏡、平安京遷都、万葉集成立、と3つのトピックが収められています。
学校で習う日本史は、ともすると事象の羅列に過ぎず、「何故?」に迫っていないことがよくあります。井沢氏の「逆説の日本史」は、①怨霊信仰、②言霊の存在、③学会の資料史上主義の弊害、の3つの主要ツールを使いながら、この「何故?」に明快に回答を与えていきます。歴史上の事件の背後にある、人々の生き方・考え方を掘り起こしてくれるので、「そうだったのか!」、と目から鱗が落ちるように、日本史への理解が深まります。
一つ残念なのは、学会批判がややくどいこと。もともと雑誌連載のせいかも知れませんが、文庫を1巻、2巻と読んでくると、同じ話が何�!��!も出てくるのが難点。
とにかくミステリー作家でもある氏の筆力は、ぐいぐいと読者を引き付けるので、読み終わるまで本を手放せません。日本史はつまらない、と思っている人には、特にお勧めのシリーズです。
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