三国志〈5〉
吉川 英治
講談社 刊
発売日 1989-04
吉川三国志のハイライト 2007-06-07
世に名高い「赤壁の戦い」が最大の見所。若き二人の知将、孔明と周瑜が、曹操のお株を奪う見事な計略をもって大勝利を飾り、魏一強時代の終焉を高らかに世に示します。ただ、この戦いを見るにあたって、戦術面だけに着眼するのは、もったいない。戦いの裏で進行する「政治的な戦い」もまた、さながら戦場のごとき熱を帯び、注目に値します。
魏と対峙して、がっちり手を結んでいるかに見える劉備と孫権。が、それぞれの看板軍師、孔明と周瑜は、お互いの大義と実利を絡ませあいながら、早くも「赤壁後」まで見据えて、丁々発止の「知の戦い」を水面下に繰り広げます。敵か味方か定かならぬ、なんという外交の奥深さ。多くのビジネスマンが部下に読ませたい本として推すのも、まさにこのあたりの「交渉事の深淵」を体感してほしいからでしょう。
軍師が前面に出た「赤壁」の一方で、猛将の胸躍る見せ場「長坂坡の戦い」もあります。ここでの主役は、関羽の陰に隠れがちであった張飛と趙雲。魏の大軍の中からただ一騎で劉備の子を救出してみせる「趙雲の一騎駆け」。たった一人で、長坂橋の上に立ちふさがり、彼らしからぬ思わせぶりな演出と、実に彼らしい豪胆な一喝で曹操を退けてみせる、「張飛の仁王立ち」。彼らの名声を不動のものとした、あまりに有名なこの大活躍をもって、劉備は滅亡を免れ、形勢逆転の足がかりを掴みます。
超人的な知略と武勇、そして、盛者必衰のダイナミズム。戦国の世を彩るあらゆる要素が凝縮されて、読者を飲み込む、恐らくシリーズ八巻中で最も華やかな一冊です。
描かれる赤壁の戦い 2007-03-26
赤壁の戦いが描かれる。三国志最大の戦いとあって、その様は凄まじい。単なる兵力より、兵法や戦の流れ、環境の正確な分析が大きくものを言うことがよくわかる。栄華を気づいた魏が傾いていく。これにより、三国志の行く末が面白くなる。
落ちつつある曹操、孔明との攻防 2006-08-23
いよいよ赤壁の戦いが始まります。しかし、こう裏ばかりかかれるとなんだか曹操が気の毒に。孔明ファンですが曹操も好きなので、ここまで自信満々にされると何だか憎たらしくなります。
一時とはいえ世話になった曹操を討つに忍びなく、見逃してしまう関羽の真情を読んでいながら、関羽の訴えを受け入れて一網打尽にできる場所へ関羽を派遣する孔明。関羽・曹操・孔明3人の立場と心情が見もの。
周瑜がとうとう消えてしまうのも、何だか寂しい。
赤壁の戦い自体はあれよあれよという間に曹操方が追い詰められ、結末を知っているせいか思ったよりも臨場感がない感じがしてしまいました。両陣営の登場人物の描写の方が面白いです。
名はなくても一人の人間 2004-12-25
この吉川『三国志』第五巻では三国志上最大の決戦・赤壁の戦いがメインに描かれています。
その赤壁の戦いでは80万と称していた魏の軍勢は1/3以下になったと書かれています。単純計算で50万以上の命が一夜にして奪われたことになります。さらに、呉の方も犠牲となった人命は数知れずです。
両軍勢の犠牲者数を併せるとそれはそれは膨大な数になってしまいます。
三国志を読んでいると、登場人物の多さに度肝を抜かれ、名前を覚えるのに一苦労します。
しかし、数多出てくる名のある人物は例えば智将や武将だったり、三国志上の社会におけるヒエラルキーの果てしなくてっぺんに近いほんの一握りでしかありません。
三国志という物語のメインはその一握りの人達であることはいうまでもありませんが、彼らの何万倍、何百万倍と登場する名もない人々の存在を決して忘れてはいけないと思います。
名もない人達がいるからこそ、名のある智将や武将は歴史の表舞台で活躍できたのだと私は思うからです。
名はなくても一人の人間なのです。
名のある人物が歴史の表舞台で派手に活躍する陰で苦しめられる一般市民や戦で死んでいく名もない一兵卒のことを考えてみるのも時には大切なことだと思います。
ソレデハ…
一大抒情詩 2003-11-11
赤壁の戦いを描く全編中のクライマックス。
中でも、趙雲子龍が敵軍の中から玄徳の幼子阿斗を救い出す長坂橋の攻防は男子たるもの(この言い方はあまり好きではありませんが)泣かずにはいられません。
中学生の頃読んだ横山光輝の漫画を思い浮かべながら読む度に高ぶってしまいます。
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