逆説の日本史〈2〉古代怨霊編
井沢 元彦
小学館 刊
発売日 1998-02
少女マンガで読む逆説シリーズ 2006-12-24
怠惰な私は「逆説シリーズ」で楽しく歴史の勉強をさせてもらっている者である。
「2」はシリーズ中でも非常に内容が濃い。
「聖徳太子編」では、「聖徳太子自殺説」と、「諡に徳の字をつけるのは怨霊封じ」「藤ノ木古墳の被葬者の推定」などが主たる逆説である。
山岸涼子の厩戸皇子のイメージが強い私は、それぞれの登場人物もマンガのキャラクターに重ね合わせながら想像する。すると、人物がごっちゃにならないし、楽しい。
「崇峻も穴穂部もヤなやつだったよなあ。こんなとことにぎゅうぎゅう詰めで一緒に葬られたとは」とか。
井沢のいうように、「飢えた虎に身を捧げる」心境に至って自殺(心中)したのであれば、やはり太子というのは、「うつ病療養歴」といい非常に繊細なメンタリティを有した人物であったと想像される。
「天智と天武は非兄弟で、天智は暗殺された」説については、大和和紀の「天の果て地の限り」を思いながら読むとよい。
「非兄弟説」については、学会では無視されているらしい小林惠子が以前から唱えているが、井沢が同調したことにより、大衆レベルでの理解は確立されたと思う。皇極が最初の結婚で渡来人との間にもうけた子が天武、というのは説得力ある説だ。ハーフであれば、次の天皇になる見込みはないからだ。
私も、天武が固辞して吉野に隠遁したなどというのは、クーデターを企図する以外の何ものでもないと思う。
「奈良の大仏編」については、清原なつのの「天の回廊」を思いながら読むとよい。すると、光明子に男子ができない苦悩とか聖武を尻に敷いていたことや、長屋王夫妻の恨みなどが容易に理解できる。
しかし、軟弱者の聖武に「武」の字が諡されているのは、「願望」というものだろうか。井沢には確たる意見があるにちがいないから、それも聞きたいところだ。
このように、「2」は少女マンガに親しんだ読者であれば、比較的容易に読み進むことが可能であるし、楽しめる。この方法はおすすめである。
面白い歴史 2006-12-19
日本歴史学の三大欠陥「宗教や呪術に対する無視や無知」「史料至上主義」「権威主義」を批判して歴史を再解釈している。前半では、なぜ聖徳太子は聖徳のし号が贈られたのか、なぜ天皇になれなかったのか、などを説明している。
後半では中大兄皇子と大海人皇子の争いについて説明している。なぜ兄弟で争うことになったのか、なぜ頻繁に遷都したのか、なぜ大仏を作ったのか、などを朝廷と朝鮮半島や大陸との関係、怨霊信仰との関係などを絡めて、ドラマチックに展開している。学校の授業では脈絡の分からなかった断片的な歴史がすっきり繋がる。なるほど古代の政治は「まつりごと」だと理解できる。真偽はさて置いても、とても面白い。中学高校生の頃にこれを読んでいれば人生が変わっていたかもとすら思う。著者にはシュリーマンのようにフィールドでの大発見をして欲しいと願う。
話の展開が遅いのが玉に瑕 2006-10-15
史料だけで構築された歴史学に待ったをかける挑戦的な試み。
幾つもの間接的な手掛かりから一つの答えをつむぎ出すそのプロセスはまるでミステリー小説の推理を解説しているかのようで興味深く読める。。。と、ここまでは初巻のレビューでも述べたとおり。
このシリーズは日本の歴史学の三大欠陥と著者が主張する「史料至上主義」、「宗教的・呪術的側面の無視または軽視」、「権威主義」に真っ向から対決するような独自の推論を展開するのだが、従来の歴史学の解釈への批判などが、かなりの箇所で重複して記述されている。そのため、主論の展開が遅々として進まず、回り道して何の話だったかぼやけてしまうこともあった。
元々連載ものなので、常に初めて読む人のための解説が必要なのは理解できるが、本として纏める時に整理して書き直すなどすれば更に解りやすくなるのだが、そのように手が加えられてない点が残念である。
聖徳太子の称号の謎 2005-12-18
「日本の歴史は怨霊の歴史」と言わしめているものは何か。著者の持論としている日本歴史学の欠陥「呪術的〈宗教的〉側面の無視」である。たとえば、7世紀に実在した厩戸皇子が理想化された「聖徳太子」に発展していく経過の中には「日本教」とも言うべき日本古来の伝統的宗教感情があった。仮に御霊信仰とそれを呼べば、それは仏教に影響を与え怨霊の鎮魂となっていく。日本は怨霊鎮魂こそ政治の最重要課題だった。
聖徳太子の称号「聖・徳」は何を意味するものか。「徳」は中国において為政者に最も大切とされるもので、中国伝統の徳治思想がある。一方、日本は神人〈現人神〉思想で、徳ではなく、カリスマ的である。日本は神国であり、天皇がその中心をなし、別の霊力で邪魔する怨霊を鎮魂する。「聖」とは、本来怨霊となるべき人が、善なる神に転化した状態である。「聖」と「徳」の名をもつ太子の、日本の「まつりごと」の歴史における地位は、限りなく大きい。
聖徳太子という人物が、日本史を語る中で最も重要な人物の一人であり、聖徳太子を語ることは、日本の歴史を語ることになる。厩戸皇子がなぜ「聖徳」なのか。この問いに答えるためには、この分厚い本の半分近いページを費やしている。本書を読んだ後、読者は聖徳太子関連の遺跡、太子の墓のある叡福寺、太子が建立した四天王寺、また、温泉療養に行った伊予の道後温泉を訪ねたくなるであろう(雅)
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