問屋と商社が復活する日
松岡 真宏
日経BP社 刊
発売日 2001-12
この本は、1999年日経アナリスト・ランキング小売部門1位、エコノミスト誌アナリスト・ランキング小売部門1位の著者による、日本の流通構造についての私論である。過去40年間、中間流通を排除する「流通革命」の考え方に支配されてきた流通業関係者に対して、あらためて流通マーケットを眺めるための情報を提供している点が特徴的である。
本書は、全部で5章からなる。まず第1章では、従来の「流通革命」がなぜ誤っているのかについて、「言葉のあいまいな共通認識」「日本の流通業の生産性が低くないこと」などを理由として挙げながら、流通の常識のウソを鋭く指摘している。第2章では問屋の重要な機能として、品ぞろえの豊富さや小売業の健全競争の維持についての議論を展開し、問屋制度があるおかげで、日本の消費者は、欧米に比べて非常に幅広い品ぞろえと安い値段を享受できるのだと指摘する。また、第3章では、メーカーマージンが内外価格差の商品別格差を決定することなどを例示しながら、物価論の常識のウソを暴く。第4章では、日本の商社のもつ社会的機能に触れながら、「川中機能」(中間流通)の重要性について述べ、第5章では、流通業関係者の意見をオムニバス形式で紹介している。流通業界についての状況把握と認識に役立つ1冊だ。(増渕正明)
消費者のために流通業従事者の待遇は後送りされるのか? 2002-05-24
著者の前作「百貨店が復活する日」を発売当時、半分眉唾気分で読んでみて、期待以上の強い印象を得ていた・・・。あれから一年以上がたち、実際に百貨店の回復もだいぶ進んでいるようなこの頃、改めて著者の「目利き」さ加減に敬服しながら読んでみた本書だったが。
流行の「グローバリズム(あるいは「ナントカ革命」など)に押し流されずに、よく実情を見て、考えてみよう」という姿勢(呼びかけ)自体は共感できるものがあった。また所謂「川中」の企業群が、「小売での豊富な品揃え」「参入障壁低下による小売業での健全な促進」を可能とするとの不可欠な役割を担っていることもわかった。
但し、五年半ほど百貨店で働いた経験を持つ者としては、小売業での激しい競争が、その従事者(従業員)の待遇等を圧迫してはいないだろうか、との思いを抱かざるを得なかった。「ほかの経営資源を活用するより、ひとを使ったほうが安上がり」との状態をあたかも自然な事柄として受け入れてしまうのは、やはりいただけない。なぜなら、そんな「安く」使われるような仕事には、優秀といわれる人材はなかなか集まらず、ひいてはそれが経営の停滞・質の低下の大きな要因となっていたと認識しているからだ。また、このことは長い目で見て、小売業をいっそう魅力のない仕事としてしまうのではないだろうか。前作で「日本の百貨店が大好きで」と胸を張っていた著者だが、実際はコンサルタント→外資系証券アナリストという高給取りであり、所詮は利用者としてその競争の恩恵を蒙ってきているだけだ。また企業経営の面からも考え、何かを助言するとしても、その視点はなべて経営陣層という大所高所にあり、現場にあるとは思えない。私見を述べれば、他の産業の場合と同様、小売を始めとする流通業を活性化させ将来につなげていくのは、当然のことだが、現場の実行者たちの努力や創意工夫に負うところが大きいはず。その点を考慮すれば、著者には流通業界の現状に過度に肩入れするよりも、むしろどうすれば現場のモチベーションが向上し、ひいてはそれが企業としての生き残りや反映に結びつくのか、そういった事柄にもっと分量を割いてほしかった。
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