猫とロボットとモーツァルト―哲学論集
土屋 賢二
勁草書房 刊
発売日 1998-08
古代形而上学者と現代分析哲学者の邂逅 2004-10-15
日本語で書かれた哲学の書物のなかでも,飛び抜けて面白かった。
哲学に詳しい人や専門家がどう思うかわからないが,哲学に興味があるけれど,あまり知識もないし,むずかしい哲学書に不慣れな同志には,是非おすすめしたい。常識さえあれば,それを錬磨しながら読んでいくことができる。難解な専門用語は使用されていないが,適度に読み応えもあって,スリリングでだ。
存在とは何か,不思議と思い,驚くことのできるセンスをもっているか否かが,哲学に開かれているか否かの分かれ目,といった人がいるが,本書はセンスのないものにもなぜ存在が問題になるのか,納得させてくれる。
その上で議論がすすむのだが,問題解決に向けて,古代の形而上学者と現代の分析哲学者が協力し合う。無縁そうな両者にも対話が可能であることがわかて感心した。引用も的確で,名前の登場する哲学者にたいしては,きっと興味がわくだろう。
時間論,認識論についての章を読むと,アリストテレス哲学を多少ともじっくり独学したいという意欲が喚起された。
文庫化するに価する好著だと思う。
著者を知っている人も知らない人も読んでほしい 2004-01-29
不真面目な本ばかり書いている土屋賢二氏の著作のうち3冊くらいしかないまじめ~な本のうちの一冊である。(真面目な本がこれくらいしかないということは著者自身公式プロフィールで書いている。)
著者のファンならばこういうちゃんとした哲学者の側面もあるんだということを知る上で是非読んでみるべきだろう。
ただ内容は哲学を真面目に考察しながらも非常にわかりやすい。「存在の不思議さ」など誰もが一度は考えそうなことを、ウィトゲンシュタインなど高名な哲学者たちがどう考えてきたかを中心にわかりやすく説明している。
特に興味深いのはなんとセンター試験にまで採用された表題論文「猫とロボットとモーツァルト」である。
「芸術とは何か」を考察するのに「芸術を解するロボットを作るにはどうすればいいか」という斬新な視点で切り込んでおり、初めて哲学が面白いと感じることができた。
一生懸命考えながら読む 2003-11-05
弁護士の木村晋介(彼は普段文芸関連の本は読まない)が薦めているというので手にとったのが「われ笑うゆえにわれあり」で、土屋賢二を知った。なるしスティックな確信犯的自画自賛文章は新鮮で、哲学者といったらこむずかしい人ばかりなのだろう、という先入観を突き破ってくれた人である。彼のエッセイの面白さはわかったが、さて本業の彼の「哲学」の方はどうなのだろう、となんとなく気になっていた頃にこの本が出版されて購入した。当たり前なのだろうけれど、「なんだ普通の文章も書くんじゃない」というのが第一印象だった。前半部分はなんとかイメージしながら論理的思考をしながら読み進めていったのだが、後半の「時間とは何か」「知覚するということはどういうことか」をテーマにした内容にな�!��てくると、「ソフィーの世界」で多少作れたと思っていた免疫も役に立たず、形而上世界の渦に呑まれてしまった。哲学書を読んだのはこれが初めてなので相対することはできないが、哲学の入門としてはふさわしいと思う。ぼくは途中で抽象的袋小路にはまって立ち往生してしまったけれど、文章は平易で「哲学」をやわらかく翻訳してくれていると思った。
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