ネットvs.リアルの衝突―誰がウェブ2.0を制するか
佐々木 俊尚
文藝春秋 刊
発売日 2006-12
ジャーナリストの仕事として 2007-05-06
ネット関係の本が興味深いのは それが社会論になっていく点にある。
技術革新が 社会を つまり人間を 変えてきたことは古来からの歴史だ。ネットも その数ある技術革新の一つに過ぎないといえばそれまでだが 幾つかの点で非常に興味深い。
まず第一に僕自身が直面している技術革新である点だ。いいかえると僕自身が「歴史」に直面していると言う事だ。当たり前ながら 誰しも「歴史」には直面しているわけだが ネットというように「切り口」がはっきりしていると 強く歴史を感じることが出来る
次に世界同時多発的な現象である点だ。こういう事態は 人類の歴史上でも 初めての経験だと僕は考える。発生している場所が多いということは そこから生まれる対応にも バリエーションが極めて多様化するのではないかと想像する。
本書が語っているのはネットが齎すものは「民主化」なのか「アナーキー化」なのか「覇権化」なのかという点だ。この視座は 1998年という相当昔に提出された廣瀬克哉という学者の論文に負っている。その論文も なかなか射程距離の長い視線を持っていたと思う。なぜなら 今尚 この3つのどれになるのか もしくはまだ提出されていない第四の事態になるのか 解らないからだ。
本書は 答えは出せていない。とりあえず 幾つかのagendaに絞りつつ ネットが齎すものを模索している。歴史というものは 後にならないと解らないというのは いつの世でも同じだ。その意味で答えが出せていないのはしょうがないかと思う。
但し 革命家とは自分で答えをまず出して それを世に問う人なのだと思う。その意味では本書を物足りないということも可能だ。但し著者はジャーナリストであり革命家ではない。本作は 優れたジャーナリストとしての仕事なのだと ITには素人の僕は思った。
これネットビジネス本じゃなくネット理想本。その心意気を買いたい! 2007-04-30
これ、若干「看板に偽りあり」ですねぇ。“誰がウェブ2.0を制するか”なんてサブタイトル打たれると、どうしても前著「グーグル―Google 既存のビジネスを破壊する」の続編って受け取るわけで(それが売り手の意図でしょーが)。
内容としては、前半がWinny、後半が半導体、OS、ipodっていう日米デファクト争いでの度重なる日本の敗戦であり、万人のパーセプションとしての「ウェブ2.0」ってのとは、ちょっとずれているんだよね。ただ、そうでありながら、この本なかなか面白かった。 次のようなスチュアート・ブランドの言葉が引用されている。「インターネットを経験した人は、自分が官僚主義の非情な世界ではなく、文化の薫り高い牧歌的な世界の中にいると感じるだろう。その世界は実のところ、六〇年代の残像だ。当時のヒッピー共同体主義と自由主義が、サイバー革命の原型を形作ったのである」。アップルはヒッピームーブメントから生まれた。コンピュータは人間の精神を解放する。なんて文脈は、こんだけITがビジネスや国家支配に結びついたご時世じゃ、多くの人にとって「なに寝言言ってんの?」ってなもんだろうし、若い人にとっちゃ初耳だろう。でも、僕も、Winnyの開発者の気まぐれな発言に勝手に肩入れしちゃった著者の青臭い“初心忘るべからず”的理想に、勝手に連帯(古!)しちゃいたい気分なのである。「ウェブ2.0はブランドやバーロウが夢見た理想の、正当な後継者なのである」。ほんとそうあって欲しい。ウェブ2.0の中核企業がビジネスだけの近視眼で中国市場に条件鵜呑みで進出しちゃったり、なんてのを傍らで見ていると、とても楽観的にはなれないけどね。それを使う人間によってネットってヨクもヤバくもなる訳でさ。
次は「看板に偽りなし」で、“ウェブ2.0は果たして夢見た理想の正当な後継者たりえるのか?”って検証レポートを是非お願いしたい。
よくまとまっている 2007-04-24
他の著書と同様、良くも悪くも新聞記者出身の筆者らしい本。
Winny制作者逮捕、ネットの自由主義=理想主義の歴史、ウェブをめぐる国家間の競争を主題としており、よくまとめられてはいる。
ただ筆者独自のウェブの未来像は全く示されないし、深い思索も見られない。
科学VS権力 2007-03-13
本書はウィニー事件とインターネットの歴史を通して、科学者・技術者vsビジネス・権力という対立を描いているように思いました。
ウィニー事件では、技術vs著作権の構図を詳細に描き、現在の著作権ビジネスは限界に来ていると指摘します。
また、インターネットの歴史は、技術vsビジネス・権力の歴史を通じて、科学者・技術者が描くネットの理想像が国家戦略・企業活動に飲み込まれていく様子を描いています。
また、本書を読む限り、日本企業はIT革命に翻弄され、未だ新たなビジネスを構築できずにいるように感じました。
結構お勧めです。
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