リスク〈下〉―神々への反逆
ピーター バーンスタイン
日本経済新聞社 刊
発売日 2001-08
勇気を持って試みる 2007-06-01
各時代における天才たちの革新的な発想の飛躍が、世間に受け入れられるにつれて、人々は未来に対する脅威を能動的に捉え、自らの手で切り開いていくことを学んできた。
数学や理科で使われる定理などの名前となった登場人物たちが、目の前で一喜一憂する臨場感のある物語。面白い。
リスク概念についての考察には必読の一冊 2006-04-09
リスク概念についての発生論から啓蒙主義を経て確率・統計によりリスク・マネージメントに対する手法発見などの歴史を詳述しています。対数の法則とか正規分布などはもとより確率論って意外と新しい概念なんですね。原題である「Against the Gods」の通り、やはり神による運命論から呪縛はいかに強大だったかが窺い知れます。
残念なのは上下の区切りが中途半端な点。文庫本化に際して上下巻を頁数的に均一にしようとしたのでしょうが、どうせ上巻の方が売上大きいのだろうし、ちょっとは値段高くしてもいいから、「1700-1900年 限りなき計測」をきっちり上巻に収めて欲しかったです。
株式投資理論の紹介本 2005-10-24
題は「リスク」となっているが、実際には株式投資の理論本である。しかし、数学的・統計的理論の解説は前半部で行われており、この部分の知識が前提となっているが、知らなくてもこの下巻だけ読めるようになっていると思われる。なので、この巻だけ購入するというのもありだろう。
株式理論の構築には統計学の知識は不可欠だが、それ以外にも人間行動が合理的なのか不合理なのか、その算定が重要になってくることも一章を割いて書かれている。古典派(新古典派も)経済学では、「人間は合理的に行動する」ことが前提になっているので、この視点は大切だと思われる。「人間は、収益に関してはリスク回避的に、損失に関してはリスク愛甲的に動く」ことは興味深い。また、近年の投資を考える上で欠かせないデリバティブについても、簡単ではあるがその登場するに至った背景と意味(リスク回避)についても説明がある。
むしろ驚くべきことは、このような本が米国でベストセラーとなったことである。投資に対する国民の感覚が日本とだいぶ異なるのであろう。また、この本とほぼ同等の内容を簡単に紹介している本として「αを探せ!最強の証券投資理論」がある。どちらを読むかは悩ましいところだ(評者は両方読んだ)。
分冊となっている理由 2005-10-24
前半を読んで投げ出したくなった。ほとんど数学と確率論の話に終始しているからである。この前半を読んで後半に進むのを断念してしまった方も多いにちがいない。
しかし、この本の力点は前半にではなく後半にある。なので、この分冊のみを読んで投げ出すことのないように願いたいと思う。幸い、前半を読んでいなくとも後半の理解は何とか可能だと思われる。
Risk sharpens you up. 2005-09-05
リスクという概念自体がなかった古代ギリシャ、ローマ時代からいまに至るまでを時系列にして、それぞれの時代で業績を上げた人物を登場させ、いろんなリスク論を紹介していく。
時代を経るごとにリスク論は百花繚乱となり、複雑さも増してくる。そこで1900年以降(近代・現代の各章)を読み進めるには、次のような対立軸を念頭におかれるとよいのでは。
それは、未来のことは計算可能だという側と、計算不可能だという側の対立軸。数学を駆使することによって未来のことは予測できるとする人物の代表格は、(やや古いところでは)ケトレー、(20世紀に入って)フォン・ノイマン、モルゲンシュテルンなど。いや、未来のことなんて不確実性や人間の直感というノイズに阻まれて計算することができないと言うのは、ケインズやカーネマン、トヴァスキー、タラーなど。
ノンフィクションとしてのエンタテイメント性に終始している感じはなかった。過去形の話があたえられるのではなく、いまに直結している話だからかなと思う。
金融や株に興味のない人でも、将来を予測することと数学との関係性については興味をもって読めそう。節々に専門用語とかが前ぶれなく出てたりもするので、いきなりこの本に当たるのが不安ならば、たとえば野口悠紀雄先生の『金融工学、こんなに面白い』などファイナンスについての新書・入門書を読んでおけば、この本も読みやすくなって、興味も知識も倍増することと思います。
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