「あたりまえ」を疑う社会学 質的調査のセンス
好井 裕明
光文社 刊
発売日 2006-02-16
生きられた経験、人生を読む「方法」 2007-02-22
久しぶりに感動する本だった。こんなにやさしく、こんなに優秀な研究者は滅多にいないだろう。フィールドワークの対象になる人との交流とその分析が、下手な社会学者、人類学者のような「既成の理論に当てはめた解釈」ではなく、生きられたものとしてどうすくいだすかを考えさせる良書。調査対象の人への調査を通して、自分がいかに変われるか、いかに支配的社会・文化の囚われている「自分」を変革し、新しい関係を構築できるかという試行錯誤の道筋が述べられている。それはマニュアル本的な「新しい自分に出会う」方法とは違い、おそろしくまわりくどく、おそろしくバタクサイものだろうが、しかしもっとも生きられた、もっとも大切なものをくみ上げることができる学問的営みだとぼくには思えた。あまりにも簡単に「変化」できるマニュアルにひかれる人が多いなか、漢方薬のように効果が現れるのには時間がかかるし、はっきりとはわからないのだが、でも確実かつ根本的に社会全体を覆っている「息苦しさ」を解決するためには必要な一冊だと思う。カルチュラル・スタディーズとか読んでないで、この本を読んでほしい。
フィールドワークの心構え 2006-10-13
社会調査には数量的なものと質的なものがある。前者はアンケートなどに代表されるが、これでは「個別の事情」が表に出にくい。それに対して後者は、全体は見えにくいかもしれないが「個別の事情」を明らかにする方法である。
しかし、個別の事情となると研究対象となる団体や個人が拒絶する事がある。上手く入り込んでも、当事者の視点にどっぷり浸かってしまい、何のために観察しているのか、何を明らかにしたかったのかを忘れてしまう事がある。誰もが落ちやすい穴なのである。これらについて、どのように対象に近づいていくのか、どうやって観察する事を忘れずに続けるかについて書かれている。
まさに、学部学生またはフィールドワークを必要とする職種の人には、一度は読んで欲しい本である。
「あたりまえ」「普通」を見直してみよう 2006-07-26
私たちは普段、無意識のうちに「あたりまえ」「普通」等の表現を多く使っています。しかし、その「あたりまえ」「普通」は本当に誰にとってもあたりまえで普通なのでしょうか。私にとっての「普通」と、あなたにとっての「普通」は違うかもしれません。
社会学に限らず、人文科学系の研究を行っていると、この問題によく突きあたります。
本書では、調査の障害となりうるこうした「普通」「あたりまえ」の意識についてうまくまとめられています。
見慣れないもの・聞きなれないものを無意識のうちによりわけてしまうのは、安心・安全を求める生物としての人間の本能のひとつかもしれません。
ですが、客観的に社会の多様な側面を見ていく際にはこうした意識が障害となることが多々あります。本書で取り上げられているような、社会的マイノリティへの調査においてはなおさらそうでしょう。
特に、初めて社会調査に触れる方にとっては、本書のような本を通して、自分の中の「あたりまえ」の意識に気づいておくことはきっと有益だと思います。
進学・就職・転職等で全く未知の世界に飛び込んだ方も、本書を読むことでが自分の今までの人生での「あたりまえ」を見つめなおすいい機会になるかもしれません。
フィールドワークの実体験がベース 2006-06-04
社会調査のフィールドワーク(訪問面接)の筆者の実体験をもとにそのノウハウを整理したものである。ひらたくいえば、調査対象者になりきるということになる。
ゲイスタディーズ、エスノメゾロジー、グラウンテディッド・セオリーなどあまり聞きなれない専門用語の解説もある。
私は、市場調査会社に勤めていますが、特にフィールドワーク部門のスタッフが読むには大変参考になりそうです。
あたりまえって… 2006-03-22
社会学の門外漢だけれど、
タイトルに惹かれて読みました。
フィールドワークで入り込み、その世界の人になりきり、
聞き取る努力をしてはじめて語られる真実。
それはまっすぐにひとと向き合い、自分がトータルな存在として
ひとと出会えるセンス=世の中を質的に調べること。
あたりまえを常に疑い、普通であることに居直らない
ものの見方が自分を心地よい存在に変えてくれる、と
筆者は述べている。
たまたま人権啓発のセミナーをうけていた時期だったので
言葉の1つ1つがよく理解できた。
各自があたりまえって思っていることにどれほど大きく差が
あるかを実感しています。
みんなが自分らしく生きていける社会が一番素晴らしい。
そのためにもう1度自分の中の
「あたりまえ」を考えてみよう、と思った。
社会学って深い。
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